ミニミニスカートで

 スキャット。言葉の代わりに“ダバダバ”とか“トゥッ トゥル”“パヤパヤ”とか歌う。ときにけだるくゆっくりと漂い、ときに機関銃のように矢継ぎ早に繰り出される。声を楽器のように自在に駆使するアカペラ。軽妙洒脱なジャズコーラス。訥々と歌うボサノヴァ。レコード屋で探しては、よく聴いている。
 映画音楽にも使われる。アルマンド・トロバリョーリやピエロ・ウミリアーニなどがつくるイタリアの60代、70年代の映画音楽。哀愁ただようメロディでも大げさにあおることもなく、とても悲しい曲をユーモラス、軽やかなアレンジで聞かせる。CDジャケットのスチール写真は大げさな表情、派手な女男のくりひろげる色事のかけひき、色とりどりのポップな家具、小さいレースの下着から,はちきれんばかりの肢体。実際に映画を見たら、どうということのないお色気コメディやメロドラマにすぎないのだろう。ジャケットを見ながら音楽を聴いていると、おかしくて哀しい妙に切ない気分になる。笑いながら、悲しくなって泣いてしまう映画を見たときのような気持ち。涙が出そうで出ないときの鼻と目の間がツンとくる感じがする。
 わかっているつもりで、どうしようもなく繰り返してしまう愚かなこと。性にまつわる諸々の感情。そして、ささいなことでも、後戻りできない、やり直すことのできない過ぎ去った時間の不可逆性を思う。
 「恋のミニミニスキャット」は、会場を流れる私が歌うスキャット、花模様に囲まれた人形、その人形たちのポスター、花模様の壁紙の絵、などによって構成される。

よみもの essay

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