柔らかい恋人

 はじめは映画音楽からだった。はっきりと意識して買って聴いたのは、フランス・レイの「男と女」のサントラだった。それから、WAVEで「元祖ダバダバ」と手書きで大書したコピーにのせられて買ったイタリアの映画音楽の作曲家、アルマンド・トロヴァヨーリの作品集。「黄金の七人」の音楽。家に帰って聴いてみると、スキャット満載と書いてある割にはスキャットが少なく、がっかりした。後々聴き直してハモンドオルガンの魅力に気づく。ジャズやイージーリスニングへと目を向けることになる。
 スキャットと見ると何でも買って聴いた。そのころ、よくCD化されたイタリアの60年代後半から70年代前半の映画音楽。映画の内容は、お色気コメディやメロドラマなどで、どちらにしてもCDジャケットには、色っぽい女優が男を誘うポーズで、ポップな色調の中に写ってる。男のいやらしい欲望の視線を満足させるべく、見えそで見えないわざとらしい思わせぶりな姿態。脱ぎかけの下着姿。よく見ると、いやちょっと見ただけでもばかばかしく、アホな格好。
 ファッション広告の写真にも通じる。エロの視線はないという暗黙の了解のもに、最先端を行ってるのよと気どっモデルが写っている。なぜか、下はスケスケのパンツだったり、なぜか片乳だけポロリと出していたりする。無表情でポーズを決めているのが、まぬけだ。
 そんな女のコを映画の看板とチラシのイメージ描く。私が演奏し、歌うスキャットが流れる会場に展示する。
 ギャラリーは映画のポスターやポストカードを売っている店の一角にある。

よみもの essay

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