1997年6月に初めての個展

 こうしていくつか作っているうちに、発表してみようかな、人に見せてもいいのではないかなと思うようになって、97年6月に大阪のオンギャラリーで個展をしました。これは「きもちいいからだ」という題で、その個展で発表した作品です。等身大より少し小さい足の上に、おっぱいや性器、お尻が合体したものが乗っています。
 先ほどから好きなものを作っている話ばかりになっているのですが、縄文土器が好きで、縄文土器の模刻を作って野焼きをしていました。野焼きというのは現在あるようにな陶芸の窯で焼くのではなく、極端に言えば焼きたいものをその辺にポンと置いて、上や下に木を置き、火を付けてそのまま焼くというものです。私の野焼きは、煉瓦で炉のようなものを作り、その中で焼きました。これこれは野焼きなので、煤けているところや緋色が出ているところがあります。野焼きは条件が難しく、かなりの作品が割れてしまいました。比較的残った作品は、割れたバラバラな部分をつなぎ合わせて、欠けたところに石膏を埋めて研ぎ、一つの形にしました。つぎはぎだらけの仕上がりは、発掘した縄文土器のようになって面白いのではないかと思っています。
 野焼きは失敗が非常に多く、別に縄文土器を作っているわけではないのでやめました。これこれは普通の窯で焼きました。このシリーズの作品は、お尻と性器が上を向く形になっています。下を向いて隠れている女性の性器を上下ひっくり返して表に出そうとしたわけです。そこからおっぱいや男性器が出てきている作品もあります。これはレースの下着をはいています。この作品にはレースの模様を彫っています。「レースの下着が好きです」っていうと、かなり変態的な感じですが、透けている花模様にエロを感じるというか、美しいと感じます。「美しい」というといい意味になってしまうので、もっと下品な意味でいいんですが…。レースが好きなので、半乾きの土に彫りこんで作りました。

想像から広がる創造「おっぱい大好き」展

 97年の個展の作品の制作中に、次は何をしようかなと考えていたら、まず初めに案内状のイメージが思い浮かびました。おっぱいの絵をドーンと描いた上に「おっぱい大好き」とか「好き好きおっぱい」のような文字を大きく書いたインパクトのある案内状を作ろう。おっぱいの絵を描いたり、立体で作ったり、いろいろな形にしたら面白いのではないかなと考えたわけです。98年3月に京都のアートスペース虹での「おっぱい大好き」という個展で発表しました。
 97年の個展の制作が終わったあと、まず油絵を描き始めました。それから立体を作りました。この立体作品は素焼きの陶です。素焼きの色は肌の色に近いので、土の違いによっていろんな肌色を出していこうと思いました。これは萩の土です。陶器をやっている人には「萩の土をこんなことに使うやつがいるんか」といわれましたが、萩の土を素焼きするとこういう色になります。
 この作品は「おっぱい大好き−彫り」というタイトルの作品です。土は志野赤で、焼いた土の赤い色を肌の色にしています。レースの模様などを参考にして彫っていきました。刺青やアフリカなどで体に傷をつけてボコボコと盛り上げる瘢痕というのがありますね。それらを意識して作りました。
 これ前の作品と対の作品になっていて「おっぱい大好き−盛り」です。模様を盛り上げるという意味です。形は前の作品と同じで、肌色は赤から白、模様は白から赤というように、それぞれの色を反転しました。
 こちらは「おっぱい大好き−黒蜥蜴」です。『黒蜥蜴』という映画のイメージが私の頭の中では重なりました。このレース模様は土が半乾きの時にレースの布を押しつけて型を付け、デコボコにします。焼き上がった後に黒い絵具を全部塗り、それから拭き取るとへこんだところに黒い絵具、つまりレース模様が残ります。
 これらの立体作品や絵は、エロ本のグラビアから自分の好きな部分を集めてスクラップし、さらにその中から作りたい、描きたい写真を選んで作りました。全て1枚の写真、印刷物を見て作っています。実際の人間を見て作ったわけではなく、ほとんど想像で作りました。背中の方は全く見えていませんし、手の細かいところは自分の手を見ながら作っています。
 これは油絵です。この油絵にピンクの大きい字で「おっぱい大好き」と書いた案内状を作って配りました。油絵は高校の美術の授業でしか描いたことがありませんでしたが、技術的に問題なく描けました。

  

  

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