ぬいぐるみやスーツに発展
ずっとぬいぐるみの作品を作りたいと思っていたので、個展の10日ぐらい前に急に思いついて「おっぱい抱き人形」というタイトルの作品を作りました。今までミシンも使ったことがなかったのですが…。1/2の原型を粘土で作り、それに新聞紙を貼り付けて適当に裁断線を引き、カッターで切って、コピーで2倍にしました。表地に伸びる素材を選んでしまったので、綿を詰めたらブクブク太ってしまいました。イマイチ魅力的ではないのですが、ちょっと間抜けでよかったかなと思っています。
この作品は前回使った足をそのまま流用して、別のぬいぐるみを乗せた作品です。
この写真は「おっぱいスーツ」という作品です。私が着られるように、私の体に合わせて作りました。ルイーズ・ブルジョアの展覧会にもやはりおっぱいみたいな丸いものがいっぱい付いていて、着られるような作品がありました。そこから直接的な影響を受けて作ろうと思ったわけではありません。ブルジョアの別の作品でゴムのおっぱいがボコボコと出たようなものを見た時に、皮状のペラペラのおっぱいを作ろうと閃きました。さらに、自分で着るおっぱいスーツを作ろうと思いつきました。この写真は92年にアンアンが行った「読者ヌード特集」のモデルになったつもりで、爽やかな笑顔のイメージで写真を撮りました。
個展に来た人に、「おっぱいスーツを着てみる?」というと大概の人は遠慮するんですが、「着る!」と応えた人はやっぱり面白いもので、何もいわなくてもポーズを取り始めます。「おっぱい大好き」展を開いた「アートスペース虹」というギャラリーはガラス張りで、外を歩く人から中の様子がよく見えます。しかも都ホテルに行くまでの道にあるので、結構いろんな人が通ります。おっぱいスーツを着た人たちは、たくさんの好奇の視線にほとんど気がつかないで、アホなポーズを取りながら楽しんでくれました。
自分が面白いと思えるものを作る
「おっぱい大好き」の展覧会で乳房文化研究会との出会いもありました。展覧会を見に来るといわれ、非難されるんじゃないかなと、ちょっと身構えましたが、そんなことはありませんでした。
作品を発表するときにも人に何かいわれるんじゃないかなと思っていたのですが、不思議なことに非難されるようなことはありません。自分自身としても、発表することに気恥ずかしいところもあり、抵抗を感じました。今はすっかり自分で「これだ」という感じになりました。やはり、自分が面白いと思うものを作らないと本当ではないと思いながら作っています。
98年の11月には人形を使って展示する「恋のミニミニスキャット」展を大阪のオンギャラリーで開催しました。
また、99年4月には大阪・本町の信濃橋画廊エプロンで「続・恋のミニミニスキャット」展「続・恋のミニミニスキャット」をしました。その二つを合わせて、更に新作を追加して、99年のキリンコンテンポラリーアワードに出品しました。この頃になると、ビデオや写真で見ただけでは分かりにくい展示になってきています。音楽が流れていますし、全体的な視覚、人間の視野は写真やビデオだけでは再現できないところがあります。 これは98年11月にキリンプラザ大阪で開かれた「キリンコンテンポラリーアワード受賞作品展」の会場風景です。キリンコンテンポラリーアワードという公募展はビデオでの応募・審査です。そのために「おっぱい大好き」と「恋のミニミニスキャット」の展覧会をビデオに撮って編集しました。このビデオを作るときにBGMとして「おっぱい大好き」のテーマ曲を作りました。「おっぱい大〜好き〜…」と膝の力が抜けそうな歌詞を作って歌っています。
この作品はこの中で最初に発表した人形です。初めは映画のジオラマのようなものを作ろうと思いました。ジオラマというのは興味をそそるものがあります。偽物なのに、偽物であるが故にかえって奇妙なリアルな感じを受ける。ジオラマを作るとなると、人形だけではなくて他のものも数多く作らなくてはいけません。とりあえず、人形を作りたいという思いがあったので、小さい部屋の一部として作ることにしました。
壁に花模様を描き、ちょっと妖しい感じにして、エロバカ映画のワンシーンのジオラマを作ろうという考えのもとに始めました。自分でミシンを使って服を縫いました。異様に短いスカートになっています。
ファッション写真やおしゃれなファション雑誌の広告には、ぱっと見た感じはカッコいいし、きまっているなと思って、よくよく見たら「間抜けだなぁー」と感じるものがあります。例えば、上はばっちり着ているのに、下は脱いでいたりとか、おっぱいだけポロンと出していたりとか。その間抜けな感じがエロバカ映画の雰囲気に近いんじゃないかと思います。
この作品はぬいぐるみです。腰、股間のあたりと顔はシリコンです。他の部分は布に綿が詰まっています。こちらは下半身が素焼きで陶の色をそのまま使い、上半身はシリコンで作りました。